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小さな香り歳時記 15「入梅」

イラストレーターでエッセイストの平野えり子さんのコラム「小さな香り歳時記」。
四季のある日本の暮らしの中で、ふと感じる季節、ふと漂ってくる香りを綴っていただきます。(偶数月更新)
第十五回目は「入梅」です。




六月というと、頭に思い浮かぶのは梅雨だ。
梅雨はどうしても雨が降って湿気が強く、憂鬱な時季と思われがち。
とはいえ、梅雨の晴れ間は天下一品だということをお忘れなく。
暑すぎず、もちろん寒くもなく、柔らかな風が吹いて極上の陽気となる。
こんなお天気だと、ついついどこかへ出かけたくなってしまう。
ではどうするかというと、迷わず山へ繰り出したい。

山に入ると、植物は元気いっぱいだ。
ノバラにオダマキ、アジサイにウツギと草木の花が咲き誇っている。
しっとりした空気の中、存分に水を吸ってすくすくと気持ちよさそうに枝葉を伸ばして愛らしい。

もちろん、そんな緑に囲まれて歩くこちらも気分は上々。
足元に咲く花にしゃがみ込み、頭上に咲く木の花を仰ぎながら、足取りは軽やかだ。

この時季とくに印象的なのが、ヤマボウシの花。
白い十字架のような花が木を覆うように咲き、山道がホワ~と明るく見えてハッとする。
純白の花びらのように見えるのは総苞片で、花は中心にある金平糖のような頭状花序だ。
秋になると、この部分が肥大して赤く熟す。
まるで枝に無数のロリポップキャンディーを立てたように見えて、これまた目を楽しませてくれる。

晴れ間といってもやはり梅雨の真っ最中、下山中に雲行きが怪しくなり、雨の気配が濃厚に。
気づくと強い水の匂いに囲まれていて、バス停に着く頃には霧のような雨が降りだしていた。
山に咲いていたヤマボウシの花は、雨に濡れていっそう白さを増して輝いていることだろう。





絵・文 : 平野えり子

1961年、静岡県生まれ、横浜育ち。
イラストレーター、エッセイスト。
山歩きや旅、暮らしについてのイラストとエッセイの作品を多数発表。
www.yes-hhh.website

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