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小さな香り歳時記 9「仲夏」

イラストレーターでエッセイストの平野えり子さんのコラム「小さな香り歳時記」。
四季のある日本の暮らしの中で、ふと感じる季節、ふと漂ってくる香りを綴っていただきます。(偶数月更新)
第九回目は「仲夏」です。




六月にはいると、そろそろ入梅を意識し始める。
暦の入梅は六月十一日。この日から三、四十日間が梅雨の季節とされている。
実際の入梅と梅雨明けは、年によってかわるのだけれど。

梅雨といえば思い出すのは当然梅の実。
梅の実が熟すころなので、この季節の長雨を梅雨と呼ぶ。
あちこちで梅の実がまるまると実っていい香り。
光る雨粒をつけた梅の実は、どこか愛嬌があってかわいらしい。

お店にも梅が出回って、これからが忙しいぞ。
まずは青梅だ。
これで梅ジュースを作る。
梅を洗ってひと粒ずつふきんで拭いてやると、なめらかな表面に白い産毛が生えていて、まるで赤ちゃんのよう。
ますます大切にやさしく拭いたら、ガラス瓶に納めてお砂糖まぶして。
日に日にお砂糖が溶けて、琥珀色のジュースがビンの中にできていくのが見える。

「お、今日はここまできたな」

こどもの成長を見守るような心境。
ジュースのビンに、「梅子」と名札をつけたいくらいだ。
香りのいい甘酸っぱさを、この夏もたっぷり楽しめそう。

青梅に続いて店頭に現れるのが、黄色く熟した南高梅。
黄熟した梅の実は、えもいわれぬ芳香だ。甘い香りに包まれて、下準備をするのもうっとりしながら。
こちらはもちろん梅干しにする。
塩漬けにしたあと、笊に広げて干して、とけっこう手間がかかるけど、こちらもまた可愛いこどもを育てる心持ちで。

そんなこんなで、六月から七月にかけては梅、梅、梅で、梅に支配される季節。
梅雨の間は下準備や漬け込みで明け暮れ、梅雨明けころの土用には土用干し。ハッと気付けば七月も後半。

時間も手数もかかるけれど、それでも梅の仕込みをやめられないのは、梅の香りに魅せられているからかもしれない。
そろそろ今日あたり、漬け込み用のビンを洗って干しておこうかな。


絵・文 : 平野えり子

1961年、静岡県生まれ、横浜育ち。
イラストレーター、エッセイスト。
山歩きや旅、暮らしについてのイラストとエッセイの作品を多数発表。
www.yes-hhh.website

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